*thank you*

じゃあね。 
そう言って合鍵を置いた。 
ん、とあなたは短く返事を返す。 
布団をかぶったままで。 

少し微笑う。 
最後まであなたらしいと思った。 

あなたの家を出る。 
街の灯りも、通い慣れた道も、何もかも同じなのに。 
いつもの駅で、いつものように定期券を使い、いつものように家に帰る。 


ただ、もうあなたがそばにいないだけ。 


それはとても悲しいけれど。 
これでいいのだと思った。 
これまでのように、すれ違い、傷つけ合うよりは。 
優しさを忘れてしまうよりは。 

----それでも互いが必要ならきっとまためぐりあえる 

誰の唄だったか。 
そんなメロディを口ずさむ。 
胸に重たいものがのしかかるけれど 
あえてそれを無視して。 

あなたと出会えたこと、愛せたこと。 
後悔はしていない。 
別れてしまったことも。 
ただ、サイコロがそういう風に転がってしまっただけ。 
どちらかが悪いわけじゃない。 

もし、あなたも私も、別の人を想い愛しあうようになっても。 
きっと私は忘れないよ? 
未練じゃない。 
大切な大切な思い出として、ずっと心の中に。 
これは、誰にも言わない私一人だけの約束。 


これが最後の恋だと思っていた。 
そこまで想い愛していた。 
自分を責めているわけじゃない。 
あなたを心から愛していた。 

ありがとう。 
あなたに会えて、本当によかった。 


>>出典:「偶然=必然」SURFACE 
 は・・・はずかしい・・・これは3年前くらいに書いたものの修正版です。
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